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例会報告

2023.09.10

例会報告

鹿島槍ヶ岳

開催回

第2018回

日程

令和5年7月30日(日)~8月2日(水)

参加者

CL永野(4名)

活動内容

鹿島槍ヶ岳2889mは、富山県黒部市中新川郡立山町と長野県大町市の県境に聳え、北アルプス北部の中部山岳国立公園内の後立山連峰の中心に位置し、安曇野から眺望する峰々の中でも堂々たる山容を誇り、名実ともに後立山連峰の盟主といえる。鋭く天を突く南峰と北峰を有する端麗な双耳峰の二つのピークは、奥穂高岳~前穂高岳の吊尾根と同様なだらかな曲線が美しい吊尾根を形成しアルピニストの憧れとなっている。主稜線の東側は、急崖で西側は、緩やかな非対称山稜で北峰2842mから北へ延びる主稜線は急激に切れ落ち八峰キレットの難所となり、五竜岳·唐松岳へと続き、南峰から南へは布引山·爺ヶ岳·針ノ木岳へと縦走路が続く。主稜線の南側の沢は、棒小屋沢で黒部川下ノ廊下十字峡となり、北側の沢は、東谷で黒部川S字峡に注ぐ。深田久弥は自身の著書日本百名山で、鹿島槍ヶ岳は私の大好きな山であると絶賛し、双耳峰を持ったこの山の品のいい美しさは見飽きることがない。一旦その良さがわかると、もう好きで堪らなくなると記している。
7月30日(日) 晴れ
阪急梅田の高速バスターミナルをAM8:00に出発したアルピコ交通のアルペン号松本行きは、新大阪·京都深草で客を乗せ途中多賀·恵那峡で休憩し、名神·東名·中央道·長野道と繋ぎ13:50松本バスセンターに到着する。気温38度のJR 松本駅より、信濃大町駅まで大糸線に乗る。隣のホームは、新島々行きで上高地方面へ行く登山者で賑わっている。大糸線は、古より人々の暮らしを支えた塩の道を巡る。田園風景広がる安曇野、北アルプスの麓、急峻な谷を抜け潮風薫る港町へと。車窓から広がる北アルプスの雄大な自然の眺めは、旅人を魅了する。電車は、15:05立山黒部アルペンートの玄関口信濃大町駅へ到着し、駅前にあるホテル·ルートイン信濃大町駅前にチェックインする。夕食まで時間があるのでホテルを出て、雷鳥が描かれた大町市のマンホーを見ながら、駅前の本通り商店街を散策する。200m 程先の左側は男清水、右側は女清水の水汲み場がある。大町水物語は、アルプス上白沢から湧く男清水と里山の尾谷里から湧く女清水の、二つの水を合わせた水は、縁結びの水、夫婦円満の水と呼ばれている。明日の登山用に持参した2本のペットボトルに、それぞれの水を汲みホテルに帰る。夕食は、近くの居酒屋で食事をしながら明日の登山計画を話し合う。

7月31日(月) 晴れ
コースタイム
柏原新道登山口5:45~八ツ見ベンチ6:32~ケルン7:01~駅見岬7:24~一枚岩7:51~石畳8:16~水平道8:30~富士見坂9:14~種池山荘昼食(9:50~10:45)~爺ヶ岳南峰11:51~中央峰12:25~赤岩尾根分岐13:35~冷池山荘13:50
ホテルよりタクシーで大町アルペンラインを走り、大きなアーチの鉄橋の扇沢橋手前の爺ヶ岳登山口(1350m)の前で下車。登山届を提出し、爺ヶ岳南峰を発する尾根に付けられている柏原新道で爺ヶ岳南峰~棒小屋乗越に至る稜線上に建つ種池山荘(2456m)を目指し登山を開始する。秋の紅葉が美しいと言われる、もみじ坂でコメツガの樹林帯の中を九十九折の急坂が続き八ヶ岳を遠望できる標識「八ツ見ベンチ」で休憩。霞んで何も見えない。「ケルン」より先は、傾斜が緩くなり樹林帯を脱し扇沢に沿った山道を登って行く。扇沢を挟んだ左側の岩小屋沢岳(2630m)の鋸歯状の岩峰群に向かいガスが岩肌の斜面を舐めるように這い昇って行く。正面の稜線上には、種池
山荘が小さく見える。雪渓を撫でるようにして吹き下ろす風は涼しく爽やかで気温は15度。急斜面を登った「駅見岬」(1850m)は、立山黒部アルペンルートの関電トンネル電気バスの扇沢駅が眼下に見える。コースの中間点「一枚岩」で休憩。中腹を巻くように登って行き岩が敷かれた山道の「石畳」より歩きやすい「水平道」で距離を稼ぎ、座りやすい石が置いてある「石ベンチ」で休憩。アザミが群生している、あざみ沢より左側が急な崖になったガレバは、足元及び頭上からの落石に注意して、トラバースで通過する。富士見坂の急坂で休憩し、最後の鉄砲坂は灌木に囲まれた山道をジグザグに登り、お花畑を抜けるとオレンジ色の三角屋根と白い壁が特徴の種池山荘の前に出る。

山荘の周りには、高山植物が咲き乱れ、天上の楽園のような光景が広がる。山荘に着くと、それまで垂れ込めていた雲海が黙々と動き出した。扇沢から上がってきたガスが種池平の稜線を越えて、種池山荘側へ流れ込んできた。やがて登って来たガスが種池山荘を覆い尽くした。昼食は、各自カレーかラーメンを注文して別に山と渓谷8月号の日本アルプス山小屋名鑑で紹介されている名物の焼きたてピザを4人で分け合って食べる。食後、稜線の正面に見える爺ヶ岳南峰(2660m)に向かう。ハクサンフウロや花の終わりかけたチングルマのお花畑の稜線を歩く。南側の蓮華岳や針ノ木岳は、ガスがかかって見えない。ハイマツの中のガレ場の急斜面をジグザグに高度を稼ぎ傾斜が増してくると爺ヶ岳南峰に登り着く。期待していた剱立山の眺望はガスに包まれ見えない。頂上直下に付けられた巻き道まで下って行くと砂礫地には、高山植物の女王と称されるコマクサの群落が咲き誇ってる。登り返して爺ヶ岳の主峰中央峰(2670m)に登り着く。周りの峰々を雲海が取り囲み遠望は出来ない。中央峰からは、稜線の富山県側を歩き灌木帯を抜けるとハイマツに囲まれた稜線を進む。北峰は立入禁止で通過し濃い紫色をしたホタルブクロを見てハイマツ帯を下って、赤岩尾根分岐で休憩。ジグザグに下って行き冷乗越からシラビソの樹林帯の中を登り冷池山荘に着く。ロビーには、湊かなえ原作の残照の頂(続·山女日記)に後立山連峰の鹿島槍ヶ岳が登場することから、2021年に冷池山荘で撮影が行われ、出演者の工藤夕貴·中村俊介·鶴田真由他の色紙が飾られていた。5時に夕食を食べ8時前に就寝。

8月1日(火)  小雨のち晴れ
コースタイム
冷池山荘5:35~布引山7:00~鹿島槍ヶ岳南峰8:00~北峰9:07~南峰9:55~布引山10:46~冷池山荘昼食(11:35~12:30)~爺ヶ岳北峰分岐13:40~中央峰分岐13:52~南峰分岐14:05~種池山荘14:41
AM 4:30山荘前の一段上がった展望地で周りを見渡すが、鹿島槍や東の空には、黒い雲がかかり、ご来光を見ることが出来ない。5時に朝食を食べ、気温は10度で少し寒いが不要な荷物を山荘に預け登山を開始。テント場を抜けた所で小雨が降り出したので雨具を着て、お花畑が広がる稜線を進むと雄大な剱立山連峰が目の前に広がる。雨はすぐやみ強い陽射しが照り続ける中ハイマツ帯の広い尾根をジグザグに登り布引山(2683m)の山頂に着く。鹿島槍ヶ岳の南峰が目の前に大きく立ちはだかる。線路の石のような登山道が続く花と展望の稜線をたどり鹿島槍ヶ岳南峰に立つ。頂上からの展望は、すばらしく真正面の剱岳は、小窓雪渓·三ノ窓雪渓·長次郎谷·平蔵谷等真っ白な雪渓が光り輝き眩しい。稜線を左に目を向けると尖った岩搭を見せる槍ヶ岳に至る裏銀座の山々も間近に迫り見渡せる。北峰へは、南峰からの下り初めの岩場を慎重に下り、吊尾根の北峰直下で縦走路を左に分け登頂する。山頂からは、直下の八峰キレットの先の五竜岳や唐松岳その奥に白馬岳も眺望することが出来た。南峰に戻り、冷池山荘に向け下山する。猿の群れを見ながら南峰の稜線より布引山のハイマツの山道を下り、冷池山荘で昼食を食べる。食後前日と同じコースを種池山荘に向け下山する。爺ヶ岳の稜線よりは、鹿島槍ヶ岳、雲海に浮かぶ剱立山連峰の絶景や針ノ木岳·蓮華岳と続く雄大なパノラマを満喫する。爺ヶ岳中央峰(300名山)と南峰は、山頂を通らず巻き道で下山し遠雷が訊こえる稜線を歩き種池山荘に着く。この山荘のロビーにも続·山女日記の撮影で鹿島槍ヶ岳山頂で写した工藤夕貴·中村俊介·鶴田真由のスティール写真や山荘の前で写した出演者の集合写真が展示されている。5時に夕食を食べ8時前に就寝。
8月2日 (水) 晴れ
コースタイム
種池山荘5:33~一枚岩6:53~柏原新道登山口8:26
AM 4:15山荘の玄関前より、眼下に煌めく宝石箱のような大町市街地の街明かりが見える。西方向の立山連峰雄山の右側に大きな待宵月が沈んで行くが天空には、星が瞬いている。やがて鹿島槍ヶ岳の右側に出た早朝の陽光は、周りの岩肌を真っ赤に染め上げる。5時に朝食を食べ下山の準備をする。山荘の前のお花畑は、コバイケイソウが群生し白い花を咲かせていて、その後には、富士山が聳えている。下山は富士山に向かって、お花畑の中の山道を下っていく。富士見坂では、見納めの富士山を見て、ケルンでは、針ノ木岳や岩小屋沢岳を見て爺ヶ岳登山口へ下山する。3日間の歩行距離22.3km累積標高差 登り2622m 下り2622m タクシーで北アルプスを望む大町温泉郷の薬師の湯へ行き登山の汗を流し、タクシーで信濃大町駅へ。昼食は、食べログで紹介されている榑木川信濃大町駅店で、野沢菜わさび蕎麦等を全員で食べる。食後、青木湖·木崎湖や安曇野をサイクリングして、大王わさび農園を訪れる予定の真砂さんと別れ、普通電車に乗り松本駅より特急しなので名古屋駅に行き新幹線のぞみで帰阪する。  永野 記

 

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