例会報告
2023.08.15
紀州富士・龍門山のキイシモツケ 花紀行第3回 個人山行報告
開催回
第2010回日程
令和5年6月5日(月) 曇り時々晴れ
参加者
CL土岐岡和雄 (6名)
活動内容
行程
9:50荒見―10:55田代コース登山口―11:35塵無池―12:20田代峠―13:05磁石岩―13:25龍門山14:10―14:35明神岩ー15:25中央コース登山口―17:10粉河駅
山行記録
深田久弥は著書「日本百名山」で富士山を「この日本一の山について 今さら何を言う必要があろう」と前書きし、「世界各国にはそれぞれ名山がある。しか し富士山ほど一国を代表し、国民の精神的資産となった山はほかにないだろう」と、日本を代表する山である、と述べています。 各都道府県にも○○富士、と名付けられた山があります。和歌山県にも紀州富士と言われる龍門山があります。 そんな和歌山県紀北部にある龍門山の県天然記念物のキイシモツケの花を訪ねて個人山行しました。
龍門山を構成する蛇紋岩により、その岩石により特異な植生があります。それがキイシモツケです。キイシモツケはバラ科の落葉低木でイワシモツケの亜種と言われ、6月の初旬ごろ山頂付近が白い花で覆われます。
龍門山の麓、荒見から正面に見える山頂をめざしスタート、住宅街を抜けると果樹園が広がる農道を直登します。 農道脇にはテイカカズラ、ナヨクサフジ、コヒルガオ、ヤブジラミが繁茂し、柿の木、蜜柑、桃ノ木、キウイなどが植えられていて、フルーツ王国、貴志川町を実感します。
途中、桑の木が数本あり、その昔は麓で蚕を飼っていた名残と思われます。この時期ちょうど桑の実が成っており、桑の実を知らない皆さんはこわごわ口に入れ、その美味しさを初めて知ったようです。
農道を過ぎると田代コース登山口に着きました。ここは以前一本松と呼ばれ大きな松がありましたが今は枯れその面影がない。一本立て水分補給をして、いよいよ山道に入ります。 雑木林に囲まれた登山道を行くと、ウツギ、ハナイカダ、リョウブなど木本やフタリシズカ、オオバギボウシなどの草本が迎えてくれます。また、春の女神と言われるギフチョウの食草、カンアオイも見られます。足元にエゴノキと思われる花びらが落下し、たくさんの名も知らぬ草や木を見るにつけ、歌人の故・中野エイさんの短歌「朝ごとに 一輪咲きて 老いの身を いたわりくれし 名も知らぬ花」を思い出します。
やがて龍門山と飯森山の分岐、田代峠に着きました。ここから山頂までは尾根筋歩きです。登山道には葉が柿の葉に似ているのでカキノハグサと言われる、薄黄色の花が咲いていて周囲を明るくしてくれます。また白い総状花序のシラトソウも見られ、季節を問わずたくさんの花が楽しめる山です。
高山に咲く花も低山や庭に咲く花も、我々のために咲いているのではないけれど、山で出会う植物を観察して、植物学の父といわれる牧野博士のこころに少しは触れられたのではないでしょうか。
磁石岩を過ぎるとキイシモツケの花がちらほら見え、やがて756mの山頂に到着です。大雨の後とあって登山者も少なく、私たちが貸し切りの山頂芝生に腰を下ろし、一面に咲くキイシモツケに囲まれてゆっくり昼食をとりました。山頂からは紀の川流域が見渡せ、初夏の自然風景を満喫することができました。
下山は中央コースをとり、途中展望のある明神岩と風穴に寄りました。 一枚岩の明神岩に立つと、紀の川の流れや山頂近くの朴の木の花を遠望することが出来ます。 風穴は横穴に数十メートル続いているようで、蝙蝠など寄宿しているのかもしれません。 やがて中央コースの登山口に着き、ここからは農道を下るだけです。 途中ヤマビワ、クサイチゴ、ウグイスカグラ、桑の実など日ごろ口にしない山のめぐみを食味しました。
往路の一本松を過ぎ、龍門橋を渡り、車道をJR粉河駅まで進んで今日の山行を終わりました。
例会設定日が梅雨前線による大雨で交通機関が不通となり、止む無く中止としました。しかし、梅雨の晴れ間の貴重な一日を無駄にするのは惜しく、個人山行として設定実施しました。 まだ交通機関が十分復旧していないにも拘わらず、参加していただいた皆さんありがとうございました。
山を歩く、それは心を豊かにしてくれ、日常に小さな非日常をプラスしてくれる
花紀行第3回、これからも花を訪ねてのんびり、ゆったりした山行を楽しみませんか。
♪念ずれば 花ひらく
♪明日も歩こう 花咲こう
Let`s do our best .
(記)土岐岡和雄