(夏山個人山行) 西穂独標~焼岳 令和6年8月5日(月)~7日(水)
西穂独標2701mⅡ峰(西穂高岳より南に延びる稜線には、一番南の独標迄の岩峰に11のピークが連続する)は、長野県松本市と岐阜県高山市の境、中部山岳国立公園内の飛騨山脈主稜線上に建つ西穂山荘から、西穂高岳への縦走路の中間にある独立標高点で、台形状の岩峰が聳える。頂上からは、三角錐をした峻険なピラミッドピーク8峰・チャンピオンピーク5峰・西穂高岳1峰が天を衝き、間ノ岳・奥穂高岳へと険しい急峻な岩峰が連なる。美しい鐘状の山容を見せる、日本百名山の焼岳は、南峰2455m と北峰2444m からなる双耳峰の山で、長野県松本市と岐阜県高山市の県境にあり、飛騨山脈の主稜線を貫く乗鞍火山帯を代表する、北アルプス唯一の活火山で、現在も火山活動が活発な為2等三角点がある最高点の南峰やエメラルドグリーンが美しい、火口湖の正賀池は、立入禁止になっている。北峰からは、眼下に赤い屋根が特徴の上高地帝国ホテル、遠望すれば、穂高連峰・笠ヶ岳・霞沢岳の眺望が素晴らしい。
8月5日(月) 晴れ
濃飛バスの3列シート新穂高ロープウェイ行き夜行バスは、21:15なんばOCAT (JR 難波駅)を出発し、大阪駅前・京都駅八条口で登山客を乗せ、灼熱の都会を後に深夜の名神・東海北陸・中部縦貫の高速を疾走する。8月6日朝4:00JR高山駅前、5:00 平湯温泉に止まり5:45飛騨山脈西穂高岳の岐阜県側に架かる、新穂高ロープウェイのバス停に到着する。8:00始発の新穂高ロープウェイの山麓側の第1ロープウェイで新穂高温泉駅1117m より鍋平高原駅1305m まで上がり、3分程歩いて、山頂側の第2ロープウェイで、しらかば平駅1308m より西穂高口2156m まで延べ高度差1039m 全長3171m を乗り継ぎ気温18度の雲上の世界へ。屋上展望台からは、左端の鋭い穂先を天に衝いて、聳え立つ槍ヶ岳より、西穂高岳へと続く鋸歯状の岩峰が連なる雄大な北アルプスの稜線が目線の高さで見渡せる。
8月6日(火) 晴れ
コースタイム
西穂高口8:35~西穂山荘(9:50~10:10)~西穂丸山10:30~西穂独標(11:51~12:00)~西穂丸山13:07~西穂山荘13:29
駅舎を出て、千石園地東端の「これより登山道」の案内板から、千石尾根の眺望の少ないコメツガやオオシラビソの樹林帯の登山道を、アップダウンを繰り返しながら登って行く。コルからジグザグ道を登り背後に笠ヶ岳を望むようになると西穂山荘2367m に着く。不要な荷物を西穂山荘にデポし、ヘルメットを被りアタックザックで、登り口に向かうと、いきなり背丈程ある大きな岩が積み重なっているのが、見上げる限り続く。岩の間を縫うように登って、森林限界を超え稜線歩きになると、穂高主稜線が眼前に連なる。ハイマツの稜線を辿り、砂地の平らな場所に出ると、穏やかな山容の西穂丸山2452m山頂に着く。眼下には、蛇行して流れる梓川や上高地のホテル群を見ることが出来る。西穂丸山から、西穂独標までは、距離約1500m で250m 程登る。展望が広がる正面のガレ場に、ジグザグを繰り返し延びている山道は、急斜面で、はるか上空まで続いている。左手の飛騨側の斜面道を進むようになり、左側は300m 程切れ落ちているので、浮石を踏まないように注意して登って行く。やがて前方に行く手を遮る独標の岩峰が現れる。独標直下より頂上までは、標高差80m の岩壁を三点支持を守り、よじ登る。中間部には、クサリが架かり、急斜面の岩場を登り切ると西穂独標山頂に登り着く。山頂は狭く10人程で満員になる。前方には、ピラミッドピーク・チャンピオンピーク・西穂高岳の3つの三角錐が並びそそり立つ。山名標識の右側より10峰との鞍部まで降り、登り返し往路を戻る。西穂山荘に戻り、食堂でTV 等で報道され有名になった生麺を使った西穂ラーメン(醤油)を食べる。食後山荘のテラスでは、紺碧の空に入道雲が湧き、雪渓が残った山肌より吹き抜ける風が心地よい。山荘やテン場の周りの、お花畑で百花繚乱の、イワギキョウやトウヤクリンドウ・オヤマリンドウ等の高山植物を見て楽しむ。宿泊手続きをして、山荘で「天命水と呼ばれる水を補給する。水は涸沢岳頂上直下の雪渓の底を流れている雪解け水を、パイプで引いていて、冷たくて美味しい。17時に夕食が始まり、気象予報士の資格を持つ支配人による、明日の天気予報や発雷確率が説明される。奥穂へ向かう登山者が多く、熱心に質問をしていた。明朝は、13度になるそうで、分厚い布団と分厚い毛布を掛け20:30消灯就寝。
8月7日(水) 晴れ
コースタイム
西穂山荘5:51~上高地・焼岳分岐6:01~池7:21~新中尾峠9:24~北峰昼食(11:28~11:40)~北峰と南峰の分岐11:57~広場13:14~新中の湯登山口14:44
西穂山荘テン場横の上高地・焼岳の道標により、北アルプス縦走を開始し、登山道脇のお花畑を見ながら、下って行く。上高地・焼岳分岐では、右を取り焼岳方面に向かう。左を取れば中尾根を下って、上高地帝国ホテルに至る。分岐より焼岳小屋に至る稜線上の縦走路には、4ヵ所程のピークがあり、アップダウンを何度も繰り返し進んで行く。山道は、全コース笹に覆われ足元が見えにくく、左右どちらか片方が深い谷になっている所が多く、踏み抜くと滑落の危険がある。植生は、シラビソ・ツガ・ダケカンバ等で、鬱蒼とした樹林帯の中を歩いて行くコースで、眺望には恵まれない。笹ヤブでの熊との遭遇に注意を払い、標高2194m の中間点で左眼下に池を見て、割谷山2224m は、西側を巻き焼岳小屋に向かう。
新中尾峠に建つ焼岳小屋2079m の前より、少し登ると焼岳展望台に着く。焼岳の全貌が現れ、山頂部にそそり立つ台形の溶岩ドームには、凄まじい活火山の迫力がある。
中尾高原より、少し下がった中尾峠からは、北峰山頂に続くトレイルが見渡せる。岩に記された黄色い丸印のペンキマークに従って、ザラザラと崩れる結晶化した硫黄の砂礫の道を登って行く。触ると地熱で熱い岩や漂う硫黄臭、方々の噴気孔から噴出している水蒸気や火山ガス等、火山特有の殺伐とした異質な風景の中を登り詰めて行き、溶岩ドームの直下で、左側から巻いて登って行き、方々で噴煙が盛んに上がる北峰と溶岩ドームの鞍部から、山頂を目指し登り着く。山頂で360度の眺望を楽しみ昼食休憩。下山は、中の湯と大きな岩にペンキで書かれた分岐を取り、右側に爆裂火口の正賀池を見下せる分岐を左に取り、すり鉢のような地形の下堀沢源頭、草付き斜面の新中の湯ルート標高差1000m を下って行く。
途中広くなった焼岳の撮影スポットとして有名な「広場」で、双耳峰が美しい焼岳と続く稜線を見渡し休憩。ナナカマド・ダケカンバ・コメツガ等の原生林の中の、尾根道を下り続け、R158沿いの駐車場がある新中の湯登山口に下山し帰阪する。 永野 記