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マダニに注意・死に至ることもある

マダニに注意

 2022年10月31日の毎日新聞に次のような記事が載っていました。記者の母親(75歳)が、山から下山後39度の熱を出したので風邪と思い、薬を飲んで安静にしていた。2日後腹痛、全身の筋肉痛、のどの痛みで飲食が困難等の症状が出て、その4日後症状が急激に悪化し救急車で総合病院搬送された。「重い感染症」と診断され集中治療室へ、その日の夜に亡くなった。発熱から1週間であった。最期をみとった医者の判断は、SFTSの可能性が高い。血液検査で、血小板の減少が尋常でなかった。山登りで、マダニにかまれるリスクが高かったのでそう考えられる。(要旨のみ抜粋)

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)とは何でしょうか。

 国立感染症研究所のホームページを見ると次のように書かれている。
「SFTSは2011年に中国の研究者らによって発表されたブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新しいウイルスによるダニ媒介性感染症である。2013年1月に国内で海外渡航歴のない方がSFTSに罹患していたことが初めて報告され、それ以降他にもSFTS患者が確認されるようになった。SFTSウイルス(SFTSV)に感染すると6日〜2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こす。検査所見上は白血球減少、血小 板減少、AST・ALT・LDHの血清逸脱酵素の上昇が多くの症例で認められ、血清フェリチンの上昇や骨髄での血球貪食像も認められることがある。致死率は6.3〜30%と報告されている。感染経路はマダニ(フタトゲチマダニなど)を介したものが中心だが、血液等の患者体液との接触により人から人への感染も報告されている。治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはない。」
感染症発生動向調査を見ると2022年7月31日現在までに、SFTSによる発症者数は、763人(生存例671、死亡例92)、このうち70代258、80代213,60代171となっている。このうち、60代、70代、80代で80人が亡くなっている。また地域別に見ると、宮崎県95,鹿児島県が62、長崎県が51となっている。大阪府は3、滋賀県1,和歌山県33となっている。

マダニ対策、今できること
(国立感染研究所のパンフレットから抜粋)

(1)マダニの生息場所
① マダニは、シカやイノシシ、野ウサギなどの野生動物が出没する環境に多く生息している。
② マダニは、民家の裏山や裏庭、畑、あぜ道などにも生息している。

(2)マダニから身を守る服装
野外では、腕・足・首など、肌の露出を少なくする。
① 首にはタオルを巻くか、ハイネックのシャツを着用する。
② シャツの袖口は軍手や手袋の中に入れる。
③ シャツの裾はズボンの中に入れる。
④ ハイキングなどで山林に入る場合は、ズボンの裾に靴下をかぶせる。

(3)マダニから身を守る方法
① 上着や作業着は、家の中身持ち込まない。
②屋外活動後は、シャワーや入浴で、ダニがついていないかチェック。

(4)忌避剤の効果
①マダニに対する忌避剤が2013年から認可された(ディート、イカリジン)。
②忌避剤の使用でマダニの付着数は減少するが、完全にマダニの付着を防ぐわけではない。様々な防護手段と組み合わせて、対策を取ることが必要。

まとめてみると次のようになる。
SFTSは主にウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染するダニ媒介感染症。潜伏期間は6~14日。症状は、発熱、嘔吐、腹痛、下痢などで急に症状が悪化し死に至ることもある。
治療は対処療法。ダニに刺された場合は、皮膚科などで適切な処置を受けることが推薦されています。ダニの活動が活発な4月から12月は要注意。現在の感染状況は、九州地方で多く発生していますが、関西でも気を付ける必要があります。いずれにしても、できるだけ草むらに入らない、肌を露出しない、野山に寝転んだり、草の上に直接座ったりしない(シートの上に座る)等を心掛けることが重要とされています。
マダニ媒介感染症には気をつけよう         

(2022.11.19 國司)

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